「機械に頼るだけではなく、自分が変わることも大切です。」

旭川の郊外で20年にわたり技工を営むエステティック・アート・デザイン。子どもの頃から手先が器用で、夜学に通いながら歯科技工士になったという代表の木村氏にCAD/CAM導入の経緯とメリットについてうかがいました。

CAD/CAM導入の決め手となったのは何ですか?

「10数年前に大学のCAD/CAM研究を見た時にカルチャーショックを受け、技工もデジタルの時代が来ると直感してコンピューターを触り始めました。その後、専門誌や展示会で情報収集はしていましたが、我々のような技工所で導入できる金額ではなかったのです。しかしここ2、3年で状況は一変しました。オープンシステムが登場して選択肢が広がりました。システムを具体的に検討し始めたのは2013年からです。私はいろいろとやりたい方なので、とにかくオープンであることが決め手でした。ミリングマシンに関しては、応用範囲が広い割には安価であったこととメンテナンスがしっかりしてそうだったのでDWX-50を選んだというわけです。」

導入から1年半ですが、ご苦労されたことはありますか?

「ソフトウェアの性格を知るのに1ヶ月、操作に慣れて思い通りの設計が行えるようになるまで1ヶ月を充てました。後は、ひたすら実験やテストを行いました。あえて10本ブリッジのような難しいものからやるんです。メーカー標準のテンプレートで品質に満足いかない事もあり、何度も検証して独自のテンプレートを作り改良を重ねました。材料や刃物もメーカーによって微妙に違うので、最適条件を見つけるために様々な種類をテストしました。元々こういった事は好きなのでしょうけど、年末年始も忘れて1人こもってやっていました。」

稼働状況はいかがでしょうか?

「DWX-50は昨年1年間で1700時間以上使いました。当技工所は保険の割合が多いのですが、確実に作業の効率は上がりました。CAD/CAMではクラウン、ブリッジ、インレーに加えて注入法による前装冠やジャケット冠、パーシャルフレームも手がけています。長いブリッジは誤差が気になるのが一般的ですが、それも機械の特性を理解してズレのないような条件で加工できるようになりました。今後もう少し稼働率を上げたいところですが、保険ベースでも十分活用できていると思います。」

導入してよかったことはありますか?

「CAD/CAMの導入は初めてでしたが、特にパーシャルフレーム、クラウン、ブリッジのシステム化ができたことがよかったです。DWXのシステムで基本形ができたので、これからは応用的な使い方になっていくと思います。また、人材確保にも繋がりました。地方で4名の小さな技工所ですが、この前はCAD/CAMをやりたいという愛知県の学生から電話が掛かってきたんですよ。このようなことは今までになかったことです。CAD/CAMに関しては、今は私だけが行っているという状況なので、設計できる人を育てていきたいという思いもあります。」

これからCAD/CAMに取り組まれる方にアドバイスをお願いします

「デジタルで効率化するためには、今までのやり方を一旦棚に上げる必要が出てきますが、これが長年職人を続けていると手に馴染んでしまっていてなかなか難しいのです。自分の場合、まずはメーカーのマニュアル通りの手順でやってみます。そこから材料も含めた特性を理解して、機械に置き換えたらどうなるか、どうやったら効率化できるかを研究します。メーカーのマニュアルを自分なりに可変していくのです。自分のマニュアルが頭の中に完成したら身になった証拠ですね。」

(2015年3月取材)